出張中に1,2冊、是非とも旅先で読んでみたい本を持っていくのが習慣となっている。今回のお供は吉村昭著、「深海の使者」だ。対戦中、同盟国との連絡は、主として暗号化された無線通信によって行われた。しかし、その暗号表のやり取りや、最先端のドイツのレーダー、ジェットエンジンやUボートの設計図は、実は片道2ヶ月超かかる潜水艦でやり取りされていたのだ。
一か八かの潜水艦に、国家の命運を託すとは............。ソ連の上をかすめれば、当時最長の航続距離を誇った日本の飛行機で、中立国経由で飛ぶこともできた。しかし、ソ連に攻められると八方塞の日本は、最大限に気を使い、かすめることすら避け、潜水艦を選んだのだ。「宇宙は変わる。ソ連もまた然り」の言葉の真意も図らず、信じたいものを信じる日本人の特性をそこに見る。
相も変わらず、本当によく取材して、書かれた本だった。読みつがれるべき1冊である。