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2015年5月27日水曜日

読書感想記: 小池真理子 「恋」



ある知人.....といってもおそらく10歳くらい年上の方?から、半年に一度読書感想リストをいただいている。博学な方で、社会への問題意識もさることながら、文学テーストも似ている感じがあり、近年はこのおススメリストから本を選ぶことが多くなってしまった。その方が大変面白いと書かれていた小池真理子に興味がわき、取り敢えず代表作を借りてみた次第。

実に不思議な経験だ。読書によって、その時代感を得ることは多々あるが、それは古典であったり、明治、大正であったり。少なくとも、この本に描かれている60年代後半とか70年代前半ではなかった。そこは、僕自身の人生が重なり始める時期であり、しかし、記憶としては全く薄い次期であり、正に歴史の空白であった時間帯だ。そして、両親の若かりし頃の時代でもある。その時代がこれだけ生き生きと描かれていることがただただ新鮮であった。読後に得たイメージが全てカラーであることが、筆者の描写力の素晴らしさを示していると言えよう。

そして、このクライマックスが僕の誕生日と重なる。強烈に脳裏に焼き付く作品であった。

物語としては、主人公の3人のうちの二人の人間関係の置き方にやや稚拙さを感じるのだが、致し方ないことなのか。

純粋なエンターテイメントとしても、かなりの出来栄え。何せ、朝の電車の中で日経電子版を読むべきところを、3日間これに費やしてしまったほど。お勧めだ。

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