2010年1月29日金曜日
2010/1 マーケットレポート
皆さんこんばんは。1月号をお届けします。
1.1月の株式市場
先月の当レポートでは、「足元の株価の上昇はリスクシナリオのみがハイライトされて下落した11月までの相場の揺り戻し。第3四半期の決算が始まる月末までは、特に業績面でのサプライズなどもない事から、現状の水準訂正が続くと考えている。感情的に売り込まれ、PBR1.0x以下に売り込まれた銘柄などに分がありそう。但し、日経平均で11,000円を超えて株価が更に上昇するとは思えず、深追いは禁物」というようなお話をしました。ほぼ、見通し通りの相場展開となったと思っています。特に、日経平均は10,982円ともう少しで11,000円台というところまで
行きましたが跳ね返され、この水準は簡単には超えないだろうということを改めて認識した次第です。高値を付けた1/15を境に相場は大きく変化しました。例年、1月のパフォーマンスは「リターンリバーサル相場(=これまでのトレンドの真逆相場)」となります。これは、1年の初めであることから、リスクバジェットが大きく、昨年の出遅れ株に投資してみようという思惑が働くからだと思っています。今年も例年通りの展開となり、昨年芳しくなかったセクターや、単純にPBRが割安な銘柄などが大きく買い戻されました。その後、米国の金融規制強化と、中国の引締めニュースを受けて、市場は下落に転じました。月次のセクター別パフォーマンスでも、リターンリバーサルの傾向が確認できます。海運、その他金融、銀行、通信、電力ガスなどのセクターが上昇した一方で、自動車、精密など昨年の好パフォーマンスセクターが売られました。
2.外国人買いは続くのか
当レポート11月号で、そろそろ外国人買いが復活しそうだというお話をしました。実際、12月、1月は久方ぶりに1兆円を大きく上回る買い越しとなっています。日本株のパフォーマンスを決めるのは外部要因というお話をしてきておりますが、今の買い戻しは主に、世界各国での超大幅金融緩和の終焉リスクを市場参加者が意識し始めたことに由来しています。その結果、ドルベースでのTOPIXが年初来2.5%上昇する中、中国、ブラジル、香港などの新興国市場が8%以上下落、欧米市場も5%前後の下落となっています。過去も、日本株は米国の最初の利上げでアウトパフォームが始まり、最後の利上げ以降アンダーパフォームしています。これを踏まえると、日本だけ上昇している構図には違和感はありません。しかし、ここ2週間ほどは日本株を保有せずに負けたファンドが仕方なくリスクを下げる目的で買っている様で、短期的にはモメンタムのピークだと感じています。外国人投資家が買い越しするということは、銘柄選択においても重要なインプリケーションがあります。彼らはファンダメンタルズとバリュエーションを精査して買いに来ますので、業績が上方修正トレンドにあり、割安な銘柄がよりアウトパフォームすることになります。安くて成長している銘柄がアウトパフォームするのは当然に思えますが、この2年は色々な投資主体が売り越し基調にあり、なかなかファンダメンタルズやバリュエーションでは説明できない株価の動きが多かったといえます。こういった面でも、市場の正常化が起きています。
3.今後の相場見通し
先週から第3四半期決算が始まりました。中間決算までは、あまりに悲観的な会社予想が大きく上方修正されてきました。しかし、ここにきて企業、業種で違いが出てきたように思います。そして、計画並み、コンセンサス並みの業績に対する市場の反応がかなりシビアな事が気になります。決算が一通り出揃う2月半ばには、「内需苦戦、外需は腰折れにこそなっていないもの、まちまちの決算だった」という認識になるでしょう。
大きな業績の上方修正なしにはY11,000円の壁は容易に割れないと思います。一方、先月のレポートでお話ししたリスク要因等により株価が一瞬弱含む局面も想定されますが、Y10,000を割るようなレベルではむしろ買いを考えた方が良いでしょう。また、引き続き、米国、中国、新興国での金融引き締めニュースには非常にセンシティブな状況が続くでしょう。
4.金融規制について
伝統的に民主党が強かったマサチューセッツ州で共和党が勝つや否や、オバマ政権は金融規制強化案について口及し、ウォールストリートを新たな標的に据えています。「大混乱を引き起こした結果、多額の税金を投入した。しかし、その反省もなく、金融機関は再び荒稼ぎをして失業率が10%を超える中、多額のボーナスをもらいけしからん。」というのが、民意であり、それを汲んだポピュリスト的政策だといえます。一方、政策として重要なのは、金融仲介機能とそこから創造された信用を維持拡大することです。新政策は、明らかにこれに反しており、実際にインプリメントされれば、大きなデフレプレッシャーとなることでしょう。株価が急落したのはこのような理由からです。
インベストメントバンクの報酬が高いのは、ビジネスが儲かっているからです。これに対する批判をかわすために、必要以上にレバレッジ規制等をかけるということは、結果的に経済に大きなマイナスインパクトを与えることでしょう。私であれば、寧ろ「インベストメントバンクのプロフェッショナルは2つ以上の職務を行ってはならない。電話取り、コピー取り、コーヒー買い出し係、机拭きがかり、接待アレンジ係etcと一人につき100人の下請けを雇うこと」という法律でも通します。ボーナスは減り、金融機能は維持でき、雇用も拡大することでしょう。アメリカの中間選挙、日本の参院選を控えていますが、この様に大衆迎合型政策が景気を冷やすリスクについても注意が必要だと感じた次第です。
5.お勧め図書
「異形の将軍」津本陽著
作者は12月の日経新聞の「私の履歴書」にも出ていました。この本は「田中角栄」の生涯を記した本で、彼の光と影が良くわかります。小沢一郎氏の事件?が騒がれる昨今、より面白くお読みいただけることでしょう。
ところで、日経新聞と言えば最近めっきり「二番底」という言葉を使わなくなってしまいました。あれだけ危機をあおっていたにも関わらず、見通しが外れるとこっそりと矛先を鎮めるというのは日経新聞の常套手段ではありますが、本当に迷惑な話です。株式投資では情報は非常に重要ですが、メディアのフィルターを通さず、統計などの一次情報を咀嚼する力がこそ大切だと言えるでしょう。
それではまた、来月まで。
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