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2009年12月30日水曜日

2009/12 マーケットレポート


皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。




といいつつ、会号としては12月号となります。お届けが遅くなり申し訳ありませんでした。当レポートは毎回執筆に4時間程度かけております。日本はメディアの経済リテラシーが著しく低く、普通の生活をして日経新聞を読む程度では偏った情報に洗脳されかねません。こういった問題意識の元、読者の皆様の投資判断、経済の現状判断の核として頂けるような内容にしたいと心がけており、毎回熟考の上執筆しております。今後ともよろしくお願いします。



1.12月の株式市場

さて、まずは12月の相場から振り返りましょう。先月のレポートでは、「日本株はマイナス材料のみを織り込んだ状況にあり、そうなった理由については十分な正当性があるものの、ここから先はダウンサイドよりアップサイドの方が大きい。価値の顕在化を助ける外国人投資家の不在がその時間軸を読みにくいものとしているが、欧米の投資家についても、この一年大きくアンダーパフォームした日本株がこのまま下落し続けるのか不安視しており、短期的には日本株のアンダーウェイトを買い戻すような資金流入が始まっても良いタイミング」とお話しました。実際、12月の株式市場は久しぶりに外国人投資家が大きく買い戻しており、その結果TOPIXで8%、日経平均ではそれ以上の年初来高値に肉薄する上昇となりました。



2.2009年を振り返って

2009年の市場をもう一度振り返ってみますと、年初から3月中旬までは株式の保有を減らす解約売りに押され、バリュエーション、ファンダメンタルズと無関係に売られる異常な相場展開となりました。しかし、また、各国の金融当局が金融の大幅緩和を行い、また政府も過去稀に見る財政支出を行ったため、次第に市場の関心は経済の安定化へと向かい、売られる過ぎ銘柄の大幅な水準訂正が起きました。これらの政策は、ドル安を招いた一方、金融ショックの影響の小さい新興国は金融緩和のメリットを大きく受ける形となりました。また資源高を後押ししました。その結果、中国、ブラジルを初めとした新興国はいち早く成長軌道に回帰しました。グローバルに見ると、これら新興国のポジションをファンディングする格好の市場が「輸出依存度が高く、金融機関の資本が薄く、人口減による潜在成長率も低く、ファンダメンタルズの魅力がない」日本株でした。

セクター別で見てみますと、市場全体は+6%でしたが、自動車は+53%、商社は+40%、電気機器は+36%というように輸出産業や資源関連のパフォーマンスが飛びぬけてよかったことが分かります。一方、銀行は-22%、電力-20%など内需株は10%以上のマイナスとなっています。つまり、表面上は日本株市場はグローバル市場を大きくアンダーパフォームしたということになるのですが、実際には「途上国の急成長のメリットを十分受けた製造業、輸出産業の株価は他国市場に引けをとらない上昇だった一方、内需関連株が全く良いところはなく、大きく足を引っ張った。」という事になります。この点は2010年の日本株のリターンを考える上で非常に重要なポイントといえるでしょう。



3.2010年の展望

では、2010年はどういう市場になるでしょうか。足元の株価の上昇はリスクシナリオのみがハイライトされて下落した11月までの相場の揺り戻しです。第3四半期の決算が始まる月末までは、特に業績面でのサプライズなどもない事から、現状の水準訂正が続くと考えています。日経新聞が大好きな「景気の二番底懸念」で感情的に売り込まれ、PBR1.0x以下に売り込まれた銘柄などに分がありそうです。但し、日経平均で11,000円を超えて株価が更に上昇するとは思えません。この水準であれば、株式を売却しても益が確保出来る金融期間を中心に売り圧力は大きく、また経済基盤の弱い新興国のデフォルトなどのニュースが突発的リスクで下落することも考えられます。年度末までの3ヶ月弱は9,500円-11,500円程度のレンジをイメージしており短期的には上限に近づきつつあります。2009年度は外需と内需で大きなパフォーマンス差が生じましたが、これがどうなるかというのは2010年の大きなポイントです。Y90-Y95円/$の為替で推移すれば、輸出産業の業績回復は上方修正トレンドで推移すると考えます。最高益のEPS(一株あたり利益)を意識しながら、P/E10x台後半での評価となるでしょう。現在の株価はBPS(一株あたり純資産)ベースで形成されており、ピーク利益ベースでのPERを見ると大きな差があります。これが、銘柄間パフォーマンス格差の最大の要因となることでしょう。内需株は不確定要素が非常に多いといえます。こちらは、P/Eで10xから15xのバリュエーションで取引されており、割安感があります。したがって、向こう12ヶ月ではどこかのタイミングで水準訂正があることでしょう。しかし、年間を通じて輸出株を上回るかどうかという意味では、為替の水準と政局の行方が大きな不確定要素で、現時点で明確に答えることは難しいといえます。これに加えて、メディア的には当然と捕らえられている新興諸国の持続的な成長もリスク要因です。このまま世界経済が順調に回復を続けると、資源価格の上昇、投資資金流入によるインフレに対抗する形で金利を引き上げなどが、成長にショックを与える可能性があります。日本の石油ショックに似たイベントといえるでしょう。実際にブラジルなどでそのリスクの芽が出始めています。この場合、一時的にはリスク回避行動が大きくなり、先進国市場も巻き込んだ調整となることでしょう。しかし、新興国の調整以上に、先進国の経済は大きいことから、結果的には短期的にな調整になるだろうというのが私のメインシナリオです。

これらを踏まえて、目先は日経平均Y11,500を上限にY11,500からY9,500のレンジ取引。年央高でベストケースでは参院選前後の夏場に13,500円程度まではありうるが、年末にかけて下落し、年を通してみれば15%前後(Y11,500-Y12,500)のそこそこの上昇というのが今年の全体感です。大きなショック的なイベントがなければ底値はY9,000からY9,500程度ではないでしょうか。昨年ほどの大きな水準訂正はなく、15%以上短期的に上昇した場合は追随は禁物でしょう。





4.日本株復活はあるのか?

2010年、もしくは2010年代のサプライズとして日本株の復活を挙げる海外メディア、ストラテジストが現れてきました。その最大の要因は、従来私が指摘している「期待値が全く株価に織り込まれていない」という事になります。実際にその通りになるかどうかという意味では政局が大きな要因になるのではないでしょうか。夏の参院選で、民主党が敗北した場合は3年間のねじれ国会となり、政策運営が不安視されるため日本株のパフォーマンスの重石となることでしょう。一方、民主党の勝利となった場合、政策運営が一気に変化する可能性があります。現在の民主党は、この選挙に勝つことが唯一最大の目的ですから八方美人にならざるを得ません。しかし、政策に優劣をつけ、日本の問題とされている国の過剰債務、過少税収過大支出、財政のミスアロケーションなどに

メスが入れば、「いよいよ死んだ20年間から日本が復活する」という期待へと変わることでしょう。



5.お勧め図書

年末年始はお堅い本は休憩しており、今年のベストセラーを読み漁っておりました。その中で、以下の2冊は特に良かったと思います。ベストセラーですので、既にお読みになった方もあるかもしれません。作家の意図から離れているかもしれませんが、世の中を見る切り口としても楽しめます。

「無理」 奥田英朗著

私は、地方都市出身(福岡市)ですが、帰省のたびに街が廃れていくのを目にし非常に悲しい気分になります。地価の水準は25年前のレベルです。東京での生活しか経験のない方は、地方の惨状が伝わってくるのではないかと思います。今後急速に高齢化が進む東京圏もこれに近い状況となることでしょう。因みに「ゆめタウン」のモデルになっていると思われる大手スーパーチェーンは、私は如何なる株価でも投資しないと決めています。経営陣の無能さもさることながら、例え成功したとしても、それが日本全体の発展に資さないことが明確だからです。

「横道世之介」吉田修一著

こちらもまた色々な側面から楽しめますが、20年前の世界観みたいなのも伝わってきて、「無理」の時代との比較が非常に示唆に富んでいると思いました。



それでは、また来月。

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