ちょっと、タイトルに無理がある。売るための手法であろうが、これは許されないだろう......。とは言え、本当に面白い本だった。久しぶりに途中で辞められないノンフィクションだ。
冒頭は、9.11へ至る過程が克明に示されている。本当は米国は分かっていたのに、攻撃させたんじゃないか?なんていう陳腐な邪推は完全に否定される。9.11を逆手に取ったのは間違いないのだろうが...。イラクへの武力行使もどこからずれて行ったのか、ひとつの仮説として読むべきではあるが、信じるに足りうる経緯が示されている。
また、米国に於けるインテリジェンスの凄さを改めて思い知った。「情報化社会」、「デジタル社会」というのは、便利な一方、プライバシーの大きな犠牲がその礎であることを再認知させられた次第。
また、外交というのが実際にどのように行われるのかを知る上でも非常に面白い本であった。時には細かい決め事以上に、端的な短歌のやり取りのような事が大きな意味を成す。そして、短歌と同様に受け手の知性が問われる。
後半は日本の政治家、インテリジェンスというものがどれだけ稚拙になっているかということが非常にうまく示されている。現政権というのは、米国はもとより周辺国にとっても、相手にするに足る政権となっていない。その中で、米国は戸惑い、周辺諸国は北方領土、竹島、尖閣諸島などの領土問題により政権を試す。その稚拙な政権が行き着いた先として、問題発生からカタストロフィまでの時間が極端に短い原発事故が描かれているが、筆者の意図したことはこれに留まらないであろう。微妙なパワーバランスの下に成り立っている東アジアにおいて、外交の何たるかが分かっていない政権は非常に危険だということを強く認識させられた。震災後の原発のように、我々は突発的事象によって多大なる惨禍を被ることになるかもしれない。100円の窓口負担の是非を論じている間に、その時は刻々と近づいているように思う。どぎゃんかせんといかん!
また、面白い言葉が随所にちりばめてあり、それを集める意味でも読み甲斐のある本だった。
「大国が互いにしのぎを削る冷徹な世界にあっては、力を持つものこそが正義なのである。力を持たない者は自分の存在そのものが悪だと決め付けられないように振舞うのが精々のところなのだ。」--フランス リシュリー枢機卿
「国民から選挙を経て権力を委ねられた内閣総理大臣が最後の決断を下し、その結果責任を取るべきだった。だが日本にあっては、政治指導者は戦後永らくこうした苛烈な局面に遭遇して決断する経験を持たなかった。現代日本のリーダーたちは、マイクロマネージメントに逃げ込み重箱の隅をつつくばかりだった。」
「些細な実務や小さな決定に手を出してはならない。国家の命運を左右する局面での決断に持てる全ての力を注いで、淡々と結果責任を担ってみせる---機器の指導者の取るべき鉄則からもっとも遠くにいたのが経済大国ニッポンの指導者だった。」
「情報とは幾ら命じても蒐まってくるものではない。自らの信望ゆえに提供されるものなのである。」---チャーチルの例。
ブッシュの戦争と、東アジアの空白。その後のオバマの東アジア回帰宣言。それを受け止められない沖縄論争。
超オススメの一冊です!
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